JuneBrideに憧れて
最終話-悠久の絆
二人を帰らせた後、俺は手続きを済ませて病室に戻った。
俺は一瞬、病室の前で立ち止まった・・
・・・杏奈、 咳き込んでる・・?
「ぁ、杏奈? 入るぞ?」
「ぁ・・・ 優くん、おかえり...」
・・この笑顔も...
声も、いつか聞けなくなる・・。
──そんなの、俺には耐えらんねー。
「どうしたの? 優くん・・・?」
よっぽど苦しいんだろうな・・・ 俺から遠い方の手が、微かに震えてる・・
「杏奈、もう・・・ 隠さなくていいよ。」
「え・・・?」
「辛いの、我慢してたんだろ・・・?」
長い間、一緒にいたからわかるんだ・・。
俺たちのために、無理して表情作って・・。
ほんとは、死ぬほど痛いんだろ・・?
「いい子だよ、お前は・・・」
俺は、杏奈の頭をなで、 手にそっとキスをした。
──それから2週間が経って、杏奈は再び意識を失った・・・。
「ただ、覚悟はしておいてください・・。」
その言葉だけが、静かに響く・・・。
もしこれで助かっても、治るわけじゃない...
ただ、永らえるだけ・・・。
このままだと、杏奈は死ぬ・・・。
今更だけどさ、ほんとに、これで最後なのかも って思う。
今まで、色々あった。
杏奈に会ってから、毎日が楽しくなったのは、全部あいつのおかげなんだ・・。
──でも、俺はあいつに何もしてやれてない。
そうだな..。
JuneBrideって言ったっけ・・・
せめてあいつが、6月まで生きられたら・・・。
TheLastName.和泉 杏奈
杏奈が倒れてから10分、真也と柴咲さんが駆けつけてくれた。
「あぁ、真也、柴咲さん・・。」
「杏奈ちゃんは・・・?」
だめだ、声が出ない・・・
手術室の灯りだけが、俺たちを照らす・・・。
「そっか・・・もう、会えない・・かも・・なんだね・・・。」
──最後に交わした言葉はなんだったかな・・。
そんなことを考える・・・
そういや、杏奈に最後に...
そう思って俺は、おもむろにポケットからある物を取り出した。
「あ・・・それ・・・」
杏奈が最後に俺にくれた物・・・ それは、あの時・・・ 三年前に杏奈が書いた、おまじないのメモだった・・・。
「杏奈が、最後にくれたんだ・・・。 『持ってて』って・・・。」
──これがきっかけで、俺たち付き合い始めたんだよな・・・。
ふいに俺は立ち上がる・・・
「ちょ、ちょっと、どこ行くのよ!?」
「ちょっとだけ、外の空気吸ってくるよ・・。」
「でも・・近くにいてあげないと・・。」
─そりゃ、一緒にいてやりたい・・けど・・・
あいつは、こうしてほしい って言ってる気がするんだ・・・。
俺は、外に出て 杏奈がくれたメモともう一枚の紙を取り出した・・。
──俺が書いた「おまじない」だ。
「──これで、いいんだよな・・・」
俺は、その二枚に火を着ける・・。
2枚の紙は、小さく、でも確かな輝きを放って夜の闇に消えていった・・。
・・・天国に行っても、また会えますように・・か、、、
JuneBrideに憧れて...
ストーリー:kira-mizuki
キャラ提供:sinziro-suzuki
製作:楓の幻灯
SpecialThanks
見てくれた全ての読者様
──可能性として、極めて低い物ではあるが・・・。
「優くん・・・。」
「あ・・・杏奈? 大丈夫なのか・・・?」
──それを同時に、同じ炎で燃やす事があれば...
「うん! もう、苦しくないよ!」
「そっか・・・ よかった・・。」
──両者の寿命は、書いた時点での両者の平均寿命をとって決められ・・・
「信じられん・・。あれほど悪化していたというのに・・。」
──両者は 「同じ場所」「同じ時間」「同じ原因」で死ぬ...
「ここまで回復していれば、退院も近いですぞ!」
「やったぁ!」
運命ですら変えるその力は。
ほんの少しの勇気と
小さな偶然・・・。
2つの力が合わさって、芽生えた物なのかもしれない・・・。
『──おしまい、おしまい。』
『お父さん、もっとお話しして!』
『ほら、お父さん 疲れてるんだから・・・ 信次郎には、私がお話ししてあげよっか』
『うん! お母さん、あのお話しして?』
『もぉ・・・ しょうがないわね・・・ ──あれは、私が高校生の頃・・・』
──JuneBrideに憧れて[最終話] -完-
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