2013年5月19日日曜日

JuneBrideに憧れて#番外編


JuneBrideに憧れて



TheAnotherName.一ノ瀬 美弘













  「・・信次郎、起きなさい・・?」









      「・・ん」





 

   もう朝か・・、最近すぐ眠れなくて困る・・。







          「じゃあ杏奈、仕事行ってくるよ。」







  「うん、行ってらっしゃい。」





 

     「あ・・、お父さんおはよう。」







           「お、信次郎 起きたのか、えらいぞ。」









  父は俺の頭を撫でると、すぐに振り返って家を出た。







    なんの変哲もない、普通の家庭に生まれ育った俺。





 でも、俺がまだ小さかった頃に、こんな話を聞いたんだ・・。













 「・・父さんと母さんはな、このおまじないがきっかけで仲良くなったんだ。」









      ・・・ん? なんで今更こんな話をするかって・・?

















 今さ、クラスでとっても気になってる子がいるんだ・・・。






・・これは、ほんの小さなきっかけから始まる、小さな恋の物語・・・。







































1章-瞳の奥で













 気になる子ってのは・・・、実は、隣の席に座ってる美弘ちゃん。





    おかげで毎日学校は天国だ。













  「美島くん。」





      「あ・・、どしたの? 一ノ瀬さん。」





  「数学の教科書を貸してほしいよ。」





    ・・・今数学の時間なんだけど・・



        だからこそ・・なのか?





      「い、一緒に見る ならいいよ。」





  「じゃあ、見せてあげるよ。」





      「は・・はい・・。」













  ・・この話の噛み合わない感じが、どうしようもなく好きで・・。







      でも、どう進展させたらいいのかわからなくて・・。













  「・・え? あの話?」







      「うん、母さんが昔してくれてた話 もっと詳しく聞きたいんだよ・・。」





  「・・へぇ~、じゃぁ 誰の事が好きなのか、教えてくれてもいいんじゃなぁぃ?」







      「ぅ・・、それは・・。」





  「あはは、冗談よ。 えっと・・確かネットにそういうのが書いてある所が・・」

















 「   ・好意を持つ相手の戸籍に記入されている実名と、誕生日を書き。その下に自分の名前、誕生日を記入して、その紙を燃やすと、その相手と結ばれる。



    ・どんな紙に書いてもかまわない。



    ・異性であれば、どんな状況であってもそれは行使されるが、同姓に対しては適用されない。

 

    ・どちらか片方のみが、この契約を行使しても それは相手と結ばれるまでの時間だけであって、この契約はその後の事を保障しない。



    ・この契約は、自分が、自分の名前を書かないと執行されない。



    ・この契約を執行した後、一週間の間に、起こりうる全ての状況で「きっかけ」が発生する。 しかし、執行した者が、「きっかけ」を利用しないなら、この契約によって結ばれる事はできない。



    ・可能性としては極めて低い物ではあるが、両者がそれを同時に、同じ炎で燃やす事があれば、この契約は両者が死ぬまで持続する。



    ・上記の場合、両者の寿命は、書いた時点での両者の平均寿命をとって決められ、両者は 「同じ場所」「同じ時間」「同じ原因」で死ぬ。」







  



       「名前と・・誕生日・・」





  「ま、がんばりなさい。」





       「なっ・・そんなの・・。」

























 次の日、学校で直接聞く事にした。









  「・・あの、一ノ瀬さん。」





      「ん・・? どーしたの?」





  「誕生日教えてほしいんだけど・・。」





      「あ・・私の? えっと・・11月8日だよ。」





  「え・・俺と一緒・・?」





      「あ、そーなの? 偶然だねー。」





  「そ、そだね。 ぁ、じゃあ俺ちょっと用事あるから・・」













    次の時間は体育だったので、体育館に移動した。



  体育館倉庫の中で、俺は紙とペンを手に取る。









  「・・一ノ瀬・・美弘・・11月・・8日・・」





      「なぁにしてるの?」





  「え・・」





      「・・その紙なぁに?」





 一ノ瀬が 覗き込むようにして、紙を見る。





      「・・?」





  「え・・えとあの、好きな人の名前と誕生日の下に 自分の名前と誕生日も同じように書いて、紙を燃やすと その人と結ばれるんだって!」





    ・・って、何言ってんだよ俺・・。 せめてごまかせよ・・。







      「へぇ~、美島君って 意外とそういうの信じるんだ?」





  「あ・・うん。」





      「そっかぁ~、私もやろっかな♪」







    そう言うと彼女は、俺の持っていたペンを取り、俺の書いていた紙の裏に 俺の名前と誕生日、そして その下に自分の名前・誕生日を書いた。







  「・・え?」







      「えへへ、後で一緒に燃やしに行こ♪」







  「・・うん。」

















    そう言って、彼女は倉庫から出ようとする。







       「・・あれ?」





  でも、扉が開かないようだ。







  「・・え?」







       「・・閉じ込められちゃった?」







  「・・・まじですか。」









     大声とかも出してみたけど、今日は水泳をやっているらしく 体育館に人はいない。





  「・・どうしよ。」







        「大丈夫、そのうち人来るよ♪」













  ・・こういう時、この子の性格ほど助けになる物ってないよな・・















 結局 放課後になって、見回りの先生に助けてもらったけど。





    ・・この紙は、燃やさないでもいいよな・・?



















  思い出の一片を忘れないために、俺はその紙を胸ポケットに入れた。

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